ヨアヒム チルナー対談録「イエロー・ケーキ~ウラン採掘の問題」(10月8日収録)
<福島みずほのどきどき日記より>
福島
どうも本日はありがとうございます。
私は「イエローケーキ クリーンなエネルギーという嘘」を拝見しました。話には聞いていたんですが、ウラン採掘の65年間、東ドイツで、ナミビアで、オーストラリアで、カナダで、何が起きているのか、労働者の被曝と環境破壊に大変ショックを受けました。この映画を撮ろうと思った動機についてまずおきかせ願えますか。
チルナー
ドイツ人としてこの問題に取り組むとても大きな動機があります。というのは私自身が東ドイツで生まれて、その東ドイツで採掘されたウランがソ連の核兵器に使われていたということです。ただし、それは長い間秘密にされていました。私自身はヴィスムートという企業があることは知っていたんですけれど、秘密ということでよくわからなかった。ところが89年、90年という政治の転換によってそれが可能になってきて、ヴィスムートについてのドキュメンタリーを撮ろうと最初は考えました。
これはウラン採掘鉱山の問題があると同時にドイツの歴史の問題であるからです。しかし、この問題に取り組むにつれて、ただドイツの孤立した問題ではなく、世界の共通する問題としてとらえていきたいと考えるようになりました。というのは、この鉱山を閉じるにあたって、清算するのに70億ユーロもかかっている。それにもかかわらずまだ終わっていないということで、この損害がいかにひどいものであるかということを、これを繰り返してはならないという意味でも、この映画を撮ってみようと思いました。
福島
イエローケーキとはウランの精製物をまとめたものを言うのですよね。
チルナー
ウランを精製するにあたって、パウダー状にしていくときに生まれて来るものです。ウランの精製過程はとても複雑なのですが、たくさんの鉱石を使ってほんとにわずかのウランを採取することになります。ウランを採取するにあたっては化学的な変化を利用して精製するのですが、そのときに黄色いパウダー状のものが生ずるので、それでイエローケーキと言われています。これが酸化ウランとして、たとえば燃料棒として、核兵器や原子力の燃料として使われている、それがテーマになっています。
福島
東ドイツ、ナミビア、オーストラリア、カナダ現地での採掘の状況を非常にショックを受けて見たのですが、この映画を撮ろうと思った動機について教えていただけますか。
チルナー
理由としては、ウランの生産はドイツではかつて世界の第4位で、それはソ連の核兵器などに使われていて、それは秘密になっていたというわけですが、ウランの精製については、反核の運動の人たちも原子力には反対するのですが、運動自体は30年から40年続いているとはいっても、ウランの採掘については実はみな知らない。ある意味、誰にも知られていない事柄であるのでそれをみなに知らせたいということでした。ウランを精製するにあたってはたくさんの鉱石が必要で、99.9%の鉱石の中から、ウランとして使われる、イエローケーキとなるものはたったの0.1%でしかありません。この0.1%が燃料として使われるわけですが、これはある意味、最後の過程であって、反核の運動は最後のところには関心があるのだけれど、最後には実は最初があって、そこの99.9%の鉱石は非常に高い放射線量を持っていて、それはただ映画にもあるように打ち捨てられているだけであって、このことを知らせたいということがありました。
多くの人はクリーンなエネルギーというけれども、実はあれだけ多くの核廃棄物を出しているということです。そしてもう一点、動機というか、日本で公開されるに当たって大きな意味があると思うのは、日本とドイツは現在ウラン鉱山を持っていません。私たちはウランを必要としていて、それはどこからか持ってきていることになります。映画にもありますように、たとえば、アボリジニの住んでいる地域とか、関係のない人たちのところから持ってきていて、私たちも汚い部分と無関係ということではないということでは、日本とドイツは接点があると言えると思います。
福島
イエローケーキが核兵器と原発の材料になり、そして現場では労働者被曝とすさまじい環境破壊を現在も惹き起こしているということに大変ショックを受けました。ドキュメンタリーを撮るに当たってずいぶん苦労をされたと思うんですね。実際、撮影が許可にならないとか。ですから、核兵器と原発におけるすさまじい秘密主義、労働者にも地域の人にも本当のことを言わないという、これもすごく印象に残っていることなんですね。撮影をされるのにものすごく苦労されたのではないですか。
チルナー
まず企業はもちろん、映画にもありますが、それについてはあまり語りたくないという態度がありました。労働者に関しては非常に情報操作されていて、安全だと感じているというところに非常に驚きを覚えました。たとえばラドンに関しても、細かいナノレベルの粉塵が肺に入って肺がんを惹き起こすということもありうるわけですが、それが何十年もあとになって起きるということですぐには証明できないために、人々はそれほど危険と感じていないということを目の当たりにしました。
ナミビアに関しても、事故がどれだけ起きたのかということで、事故が少ない採掘場に関してはホテルの星のようにたくさんの星をもらっていて、事故が少ないと彼らは思っているわけですが、実際には何十年もあとに健康面でどれだけの危険があるかということを全く知らされていないということがあります。それはドイツのヴィスムートの場合もそうで、何十年も後になってから肺がんにかかる人もいます。これからもわかるように、人々は本当に情報操作されやすいということをつくづく感じました。
福島
チルナー監督の「イエローケーキ」で、最後の最終処分場と、原料はどこから来るのかという最初と両方わたしたちは知って、実はクリーンなエネルギー、原発という、最後の最終処分場も私たちは10万年以上お守りはできないという話、それからどこからやってくるのかというスタートの時点のウラン採掘におけるすさまじい問題点と両方ようやく知ることができたと思っています。その意味で、原発・核兵器の最初から最後まで、実は人類はコントロールできないということをこのドキュメンタリーを見て思いました。
by y_csm521
| 2011-11-08 23:36
| 資料・情報・講演