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COSMOSの原発関連ニュースメモ

ycsm521.exblog.jp

毎日たくさん流れてくる原発関係のニュースの個人的なメモです。

定期検査中の原子炉で何が行われているのか?



(福島の原発事故以来、一貫して原発の危険性について発信し続けている、京都の諸留(モロトメ)能興(ヨシオキ)さんからの情報。原子炉の「定期点検」がどのようなものであるかを説明し、危険な「原子炉ゲーム」について警告しています。COSMOS)

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今、全国の原発が定期点検中で次々と運転(稼働)停止状態に入っています。
「定期点検(略して「定検」ともいいます)に入った原発は安全だろう」と思っている方も多いと思われます。
しかし、定期点検中の原子炉で何が行われるのか?自動車が車検工場で車検を受けるのとは、全く違った、原子炉特有の、定期検査期間中だけの、特有の危険な作業も、この定検中にはなされているのです。

「原子炉は停止を開始した時から地獄が始まる」と、よく言われます。
 それには幾つかの理由があります。

(1)停止しても車のように、キーでエンジンを切ってしまのと違い、原子炉は、エンジンに相当する、炉心内の核分裂連鎖反応 (nuclear chain reaction)をストップしても、冷却し続けない限り、高熱状態が続きます。核分裂後のウラン(U)やプルトニウム(Pu)の原子核の破片が、更に崩壊熱を放出し続ける為、高熱を発し続けるからです。

中性子をよく吸収するカドミニウムやホウ素を含む制御棒が、スムーズに炉心内に挿入するとは100%保証されていません。事実、過去に、数カ所の原子炉で制御棒が正常に稼働せず、トラブルを起こした事例がいくつかあります。
また、たとえ制御棒はうまく挿入し稼働したとしても、その次に、今回の福島第一原発事故のように、冷却機能がうまく働かない危険性も待ちかまえています。

これらのことは、今回の福島第一原発事故で何度も報道されていますので、(1)に関する詳しい説明は省略します。


(2)
定期点検中の二つ目の危険として、『核燃料の再配置問題』があります。
この問題も、重大な事故に結びつく、見逃せない問題が潜んでいます。

以下は、山内知也教授(神戸大学大学院海事科学研究科・放射線計測学)及び故平井憲夫氏(1級プラント配管技能士)らの指摘を参考にしたものです。

炉心内の核燃料棒1本の価格は約1850万円。BWR(沸騰水型原子炉 Boiling Water Reactorの略)型原子炉の場合、形式の異なる燃料集合体を同時に使用できるため、燃料棒本数の異なる燃料集合体が混用されることがある。そのため原子炉全体の燃料棒の本数は、原子炉によって異なることは珍しくありません。

100万キロワット級の原発の場合だと、全ての燃料集合体が8×8型で60本タイプであるなら、炉心全体で使用する燃料棒総数は、実に45,840本もの多数になります。
金額で計算すると、核燃料棒1本だけで1850万円もする「超豪華品」なのですね!
それが45,840本集まっているのですから、炉心内の核燃料の総額は、1850万円×45,840本=約8480億円のも巨費になります!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E6%96%99%E9%9B%86%E5%90%88%E4%BD%93

核燃料棒は、普通は『ジルカロイ-2』と呼ばれる燃料被覆管で包まれていますが、この燃料棒1本は正常に稼働した場合、約3~4年間で燃え尽きるといわれます。
http://news.livedoor.com/article/detail/5524572/

毎年1回(13ケ月毎に1回か?)の法律で義務づけられている定期検査の際、炉内のこの燃料棒の全部を一度に交換するのではなく、炉心内の全部の核燃料のうちの、約三分の一乃至四分の一が、『使用済み燃料集合体』として、炉心外に取り出されます。そして、そうやって取り出された核燃料と同数の新しい燃料集合体が、原子炉に補充され(装荷され)ます。

こうした補充作業とは別に、定期点検(定検)の際には、核燃料棒の燃焼度に応じて、完全にはまだ燃え尽きていない、部分的にしか燃えておらず、まだ1年から2~3年は使える燃料棒の配置を、変更する(核燃料の炉心内での置き場所を再配置する)作業も、今回のような定期検査(定検)の際に、行われています。
このように、まだ核燃料として継続して使える核燃料を炉心内で再配置する作業を、現場では、俗に『シャッフリング』と呼ばれています。

『シャッフリング』と呼ぶ理由は、核燃料棒をトランプのカードに見立てて、丁度、ワンゲーム終わった後に、トランプのカードを「シャッフル」するように、まだ使用できる核燃料棒と、新しく装着したまっさらな核燃料棒を、再配置することで、炉心の熱出力をより安定化させ、効率化を図る目的から行われる作業なのですね。

しかし。この『シャッフリング』にも、実は、私たち外部の者には、伝わってこない、大きな危険が潜んでいます。炉内の燃料棒の配置如何によっては、運転再開後の炉心の核分裂連鎖反応の状況が大きく変わってくるからです。

まだ完全に燃え尽きていないで、部分的にはまだ使えるような「部分燃焼、半燃焼」している燃料棒も含め、そっくり全部交換して、全てサラピンの核燃料棒に置き換えてしまえば、炉心内の核燃料棒の状態の「均一性」を保つことが出来、それだけ再稼働後の原子炉の運転状況も安定性は保たれます。

しかし、原発の炉心内では核燃料は、均一には燃焼せず、炉心中央部と炉心周辺部とでは、燃焼の度合いに違いが生じます。
さらに、福島第一原発3号炉のように、核燃料にウラン(U)の他に、プルトニウム(Pu)も混じっている場合は、さらに核燃料棒の燃焼の度合いの分布が、複雑に変わってきます。

100%全部そっくり交換するのは、経済的に膨大な出費となり、もったいないので、100%全部の交換はおこなわれませんが、しかし、部分交換する場合でも、炉心内の燃焼度の分布には、1年間も燃えると、上で述べた様に、かなりのバラツキが生じるので、交換した後に、まっさらな核燃料棒を、そのまま同じ位置に差し替えるだけでは、うまく燃焼しません。

それで、上で述べたような『シャッフリング』する作業が、必要になるわけなんですね。

交換時期を既に過ぎた古い燃料棒があっても、経済性を優先させようとして、交換せずに、あるいは交換するにしても、1本でも少な目に交換させたほうが、更に継続して使い続けることが出来るのであれば、それだけ経済的な損失を減らすことが出来ますから、電力会社の経営陣としては願ってもないことですよね。

しかし、こした経済的利潤追求を優先する事と引き替えに、炉心の不安定さが増大することになります。利益追求という電力会社幹部の思惑が、定期検査(定検)中の、シャッフリング作業現場主任に見えない圧力となってのしかかってくることになります。

炉心のより安定的な運転を保ちながら、同時に、利潤を少しでも多く(=コストを最小限に押さえ込みたい)との、双方の「バランス」を考えながら、この「シャッフリング」をするのが、現場主任の「腕の見せ所」でもあり、それはまた、原発会社内での出世にも通ずる道でもあるのだそうです。

直径1~2センチ長さ4メートル以上という、細い「篠竹」のような、この核燃料棒1本が、なにしろ、1850万円もの超高額なのですから。これ1本だけで、庶民の家一軒が建つほどのシロモノの燃料棒が、4万5千本も集まっているのですから。そう簡単には使い捨てにする筈はない・・と思うのが、当たり前ではないでしょうか?

新旧燃料棒のそっくり交換と、この『シャッフリング』が平行して行われる定期検査(定検)中の原子炉現場では、会社の利益優先(=炉心のより不安定運転)による、不測の事態が起こる危険度の高い「シャッフリング」が、日常茶飯事的に行われているであろう・・と見るのが、普通であろう。

「シャッフリング」完了後の書類上の報告書は、監督関係省庁へ上がってはいるであろう。しかし、「シャッフリング」作業中に、現場主任の「核燃料棒入れ替え作業」を指導監督省庁役人が立ち会い検査など、どこまで正確にチェックしているか・・となると、全く心許ない状況にあるようだ。

そもそも、放射線の超高濃度汚染の危険地帯の炉心間近くにまで立ち入るような「愚かな役人」など、いる筈もなかろう!せいぜい、電力会社側が事前に用意した、「新しいシャッフリング図面」を、現場に立ち入る前の「デスクワーク」でチェックしてから、現場で数分間、実際の「シャッッフリング」作業を眺める・・程度のことしか行われていないのであろう。

ここでも、世間の知らない所で、「手抜き」(=原発会社の利益優先=安全性後回し)が、密かに行われているのでは・・と見て、まず間違いなかろう。
意図的な「下心」でシャッフリングされた原発トランプの「婆回しゲーム」で、健康を蝕まれ、いのちを脅かされる「ジョーカー」を最後に手元に回されるのは、いつでも一般市民、国民・・・という、そんな原子炉ゲームは真っ平御免です!!

by y_csm521 | 2012-02-21 23:04 | 原発の安全性

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